映画『ベルリン陥落1945』、原題の『Anonyma - Eine Frau in Berlin(匿名 ベルリンのある女)』が正しい内容。

敗戦国は悲しい

映画『ベルリン陥落1945』は、日本語の題名が内容の核心を伝えていない。

原題は『Anonyma - Eine Frau in Berlin(匿名 ベルリンのある女)』である。

映画自体は地味ではあるが、敗戦することの意味を深く教えられる良作である。

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(DVDは販売されていないようなのでレンタルするか下の動画を)

元になった原作は

『ベルリン終戦日記―ある女性の記録』 山本浩司 訳 白水社

1959年、敗戦の14年後に、ある女性が敗戦後のベルリンでの体験を手記として出版した。ソビエト兵からの強姦被害の記録。複数の兵士によるレイプを逃れるために上級士官の愛人になったことなどが記されていた。

その内容のため、“ドイツ女性の恥”と非難された。

映画では、戦地から帰国した夫が彼女を罵倒し、そのまま去ってしまう様子がラストに描かれている。女性本人は生きることに忙しく、夫の感傷にかまっているどころではない。

彼女は2001年に死亡。90歳まで生きた。名前は「Anonyma (匿名)」のままだ。

 

歴史好きの人間としては、まるで日本の敗戦を見ているような気にさせられた。

映画の途中、ベルリン防衛軍司令官ヴァイトリング砲兵大将が、ヒトラー総統が自殺したこと、降伏したことを市民に拡声器で告げる。これはもちろんドイツ語で。

ドイツ語の分かる士官から、ドイツの降伏を知らされたソビエト兵たちが、一瞬沈黙し、歓喜の声を挙げる。そして階級の上下も関係なく抱き合い喜び、そして歌う。ソビエト連邦国歌を。


ソビエト連邦国歌1944~1955

(映画では2番の一部のみ)

 嵐を通し

自由の太陽は輝き

レーニンは我らに道を示した

人民への忠誠をスターリンは教え

労働へ偉業へと我等を鼓舞した

ほめたたえよ我らが祖国

敵国の国歌を聞いているドイツの民間人たちの表情。虚ろで、すべての希望を失った顔。しかし、死ぬわけにもいかない。子供たち、家族がいるからだ。

思わず「わかる、わかるぞ」とつぶやいてしまった。

脳内シミュレーションが、敗戦時の日本の記憶まで作り上げてしまったようだ。

第二次世界大戦後のヨーロッパ

ナチス・ドイツと戦った当時の英国首相、ウィンストン・チャーチルは下院で演説した。英国がソビエトに協力するために議会を説得する内容だ。

Wikipedia「ウィンストン・チャーチル」より引用

「もしヒトラーが地獄に侵攻することになれば、私は下院において悪魔に多少なりとも好意的な発言をするようになるだろう。」

 そして結果、現実の世界がどうなったか。

共産主義国であるソビエト連邦のスターリンを勝利に導き、戦争だけでも約2千万人。

その他に、ドイツに協力したとされる数百万人の人々の粛清と収容所送りが行われた。

ドイツの東部と東ヨーロッパは共産主義国となった。

ベルリンの壁が崩壊するまで支配は続いたのだ。

 

チャーチルは、ある悪魔と戦うために、もう一人の魔王と手を組んだのだ。

 

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