映画『君の名は。』ハッピーエンドの似合わない男。新海誠

嫁と『君の名は。』のDVDを観ました。

嫁は、「面白かったけど、そんなに人気が出るほどかな」との反応。

観る前に「世間が言うほどの飛び抜けた傑作ではない」と前置きしておいたのですが。

彼女は純粋なリアリストなので、当然の反応でした。

 

新海誠は、ひたすら探し続けて、まだ見ぬ女性を追い求める男だったと思っていたのですが。

結果、探し続けた女性を見つけられない男を描くのが得意のはず。

新海誠に似合うのは、バッドエンドの筈です。

興行として成功するならハッピーエンド

しかし、バッドエンドだとこんなに成功しなかったでしょう。

なんせ2017年7月の段階で、250億円突破したとか。凄いですな。

 

当然といえば当然のことなのですが、『君の名は。』はあのラストでなければ、有名にはならなかったでしょう。

 

『ほしのこえ』も『秒速5センチメートル』もあんな終わり方、普通の人は納得しません。 

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新海誠ファンとしては、『ほしのこえ』が、個人的に最高と評価しています。

少女が、宇宙服ではなく制服のままなのは、彼女の時が止まっている寓意なのです。

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追い求めている女性には出会うことはできない。

大人になった男は、少女のままの人に出会うことはもうできないのだ。

その人は、記憶の中にしかいないのだから。

たとえ、再び出会ったとしても、もう別人なのです。

個人的には糸守町もろとも蒸発して欲しかった 

3年前に、糸守町は隕石に蒸発させられて、もう消滅したのです。

もちろん三葉たちも。

少年が好きになった少女はもう消えてなくなった。

だからこそ、恋した少女を少年は追い求める。

そんなバッドエンドを「期待」した私はあまり普通ではないのかも。

 

新海誠監督が自分の不文律を破ったからこそ、『君の名は。』成功したアニメーションなのです。

でも、というより、だから不倫したんですね。プライベートでも不文律を破ったのでしょうか。

(本人は、否定していますが)

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ところで、入れ替わりのこと

しかし、高校時代に、同世代の女の子から自分の部屋の中身を見られたら、自殺したくなるでしょう。恥ずかしさのあまり。

 

筒井康隆の傑作、『家族八景』「澱の呪縛」が頭をよぎりました。

テレパスの美少女超能力者、火田七瀬が、子供が男の子だらけの家にお手伝いに行って、エライものを、彼らの精神世界を覗いてしまい、嘔吐してしまう話。

恥ずかしすぎて、下手すると覗いた人間を抹殺したくなるでしょう。

 

瀧くんはエロ本とかエロい動画などの諸々を、自分の部屋に置いていないのか。マスターベーションもしないのか、高校生がそれでは逆におかしいのでは。

だから新海誠は、「童貞臭い」とか言われるのでしょう。

石田衣良の指摘は褒め言葉

作家、石田衣良の指摘は正しい。

というか、そんなことは『ほしのこえ』を観た時から分かっていたけど。

 

けれども、石田衣良の発言は褒め言葉だと思う。

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「君の名は。」の監督の新海誠さんも若い子の気持ちを掴むのが上手いと思いました。たぶん新海さんは楽しい恋愛を高校時代にしたことがないんじゃないですか。それがテーマとして架空のまま、生涯のテーマとして活きている。青春時代の憧れを理想郷として追体験して白昼夢のようなものを作り出していく、恋愛しない人の恋愛小説のパターンなんです。

 付き合ったこともセックスの経験もないままカッコイイ男の子を書いていく、少女漫画的世界と通底しています。宮崎駿さんだったら何かしら、自然対人間とか、がっちりした実体験をつかめているんですが、新海さんはそういう実体験はないでしょうね。実体験がないからこそ作れる理想郷です。だからこそ今の若者の憧れの心を掴んだのかも知れません。

「実体験がないからこそ作れる理想郷」を創造するのが、クリエイターです。

しかも付き合ったこともセックスの経験もないままカッコイイ男の子を書いていく、少女漫画的世界が新海誠の世界観なのだから、作品がそのままなのは、当然です。

だからこれは褒め言葉。

一流の作家の鋭い指摘です。

『君の名は。』と 関係ないけど『らららクラシック』・・・

石田衣良さんの『らららクラシック』が好きでした。

ハンサムなルックスで、音楽には素人なのに、極めて適切な批評が良かった。

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