遠藤周作は原作の『沈黙』で、繰り返しユダのことを書いていました。
神の子イエスを裏切った、最悪の裏切り者であるユダ。
神はユダを見捨てたのか。
弱さ故に裏切ったユダは、永遠に地獄にいなければならないのかと。
私自身も聖書を初めて読んだ時、ユダの扱いが酷すぎると憤慨しました。
彼は、ちゃんと反省して銀貨を返しに行っているのです。そして後悔の中、首をつって自殺します。
自殺するほど反省しているものを、裏切り者扱いは酷いと。
しかも、イエスは裏切りを知った上で
「去れ、行きて汝のなすことをなせ」とユダ本人を見捨てているのです。
こんな神様は、おかしいとさえ思いました。
今思うと、日本人らしい多神教徒の発想です。
しかし、キリスト教においては、ユダは永遠の裏切り者です。
ダンテも『神曲』の中で、地獄の最下層にユダを落としています。
映画『沈黙-サイレンス-』でも、ユダについては言及してません。
ユダに同情することすら、非常識なのでしょう。
ダンテの『神曲』、ユダの扱い
西洋の古典『神曲』における地獄の構造とは、下図のようなものです。
ユダは、地獄の最下層にあたる第9圏谷コキュトスの、最も底に置かれています。
主イエスを裏切った罪のためです。
堕天使ルシファーに噛み続けられているらしい。
『ユダの福音書』の驚き
実は、キリスト教の初期には、現在存在する福音書以外にも福音書があったことがはっきりしています。
ちなみに、福音書とは、神=イエスの言葉のことです。
また日本でエヴァンゲリオンといえば、庵野秀明のアニメのことですが、エヴァンゲリオンとはギリシア語で福音のことです。
初期のキリスト教会では様々な福音書が存在したのですが、教会が取捨選択し、現在の形になったらしい。
捨てられた福音書の中に『ユダの福音書』の存在があり、なんとその現物が発見されています。
ユダが裏切ったのは、イエスの指示によるもので、ユダは重大な使命を帯びていたのでした。
ユダ:「先生、そんなこと言われても出来ません。それでは私が最悪の裏切り者になってしまいます」
イエス:「お前がそう言うのはわかる。でも他の弟子にはこの仕事は出来へんのや。頼むからやってくれ」
のようなやり取りがあったと書かれています。
これが本当だとすると、キリスト教自体がひっくり返るような事態になるでしょう。
遠藤周作の『沈黙』どころではありません。