犯罪を予知し、実行する前に逮捕される時代が目の前に来ています。
中国政府は2020年までに、重点公共区域の監視カメラ網のカバー率を100%にする予定です。
数秒間で数十億人の顔を判別し、氏名や身分証番号まで解析できるとか。
記事の中では、信号無視をしたウーさんが確認されたとしています。こんな調子で個人が特定できれば、中国では逮捕し放題になります。
すでに中国では「犯罪を予知し、実行する前に」逮捕されている思想犯が大勢います。テクノロジーの進歩が、今以上、まともな意見を持つ思想犯を拘束してゆくのです。
仰天 中国の顔認証システム「天網」は数秒間で20億人を識別!|1日に39人の手配犯を逮捕する方法とは
From Nanfangzhoumo (China) 南方週末(中国)
Text by 鄭宇鈞2018.3.10
「天網恢恢疎にして漏らさず」──中国の顔認証システムが猛烈な勢いで精度を上げ、ビジネスとしても急激な成長を見せつつある。
中国政府も2020年までに、重点公共区域の監視カメラ網のカバー率100%、重点業界、領域および公共区域の映像画像データバンクのネットワーク率100%の目標を掲げている。
現在の監視システムの精度や課題を、中国メディア「南方週末」が深追いする。
2018年1月8日、深セン、小雨。
赤信号が青に変わるまでにはまだ40秒以上残っていた。
ウー・ビンという名の男が自転車で、荷台に娘を乗せたまま横断歩道を横切っていった。交通指導をしている交通警官のことなど意に介さぬ様子だ。
ウーは想像もしていないだろうが、彼が信号無視をする様子は、深セン交通警察の顔認証システムに撮影されていた。ディスプレイにはなんと氏名や身分証番号まで表示されていた。
顔認証の「天網」システムを起動すると、探したい人物がどこにいても、動体顔認証システムを通して探し出せる。数秒間で20億人を識別し、ターゲットとなる顔がどこにいるのか特定できるのだ。
SF映画『マイノリティ・レポート』のワンシーンのような風景が、いまや中国では日常の一部となっている。
中国の調査会社「アイリサーチ」は、『2017年コンピュータビジュアル業界の研究報告』で、2017年の中国のコンピュータビジュアルの市場規模は40億元(約670億円)に達すると予想している。今後、セキュリティ分野は爆発的な成長が見込まれることから、2020年には725億元(約1兆2000億円)にまで膨らむ見通しだという。
『マイノリティ・リポート』について
私的な意見ですが、映画『マイノリティ・リポート』は後味の悪い作品でした。
2054年のアメリカ、ワシントンが舞台。
街中に監視カメラが設置されて、市民の動向はすべて把握されている。そのうえに、近未来の犯罪を予知できるシステムが開発され、世界には殺人事件が存在しない。
殺人を犯すことを予知された人間は、実行する前に逮捕され冷凍刑に処されるためです。
トム・クルーズ演じる主人公、ジョン・アンダートンは予知犯罪取締局の主任を務めています。
熱心に職務に励むジョンでしたが、ある日、未来予知システムから彼自身が殺人を犯すことを告げられます。逃亡するジョン。ここから物語が急展開します。
正直言って、予知犯罪取締官のジョンが明らかにけしからん人間です。
職業人としてのモラルに欠けているのです。他人ならば、実行もしていない罪でもためらうことなく逮捕するのに、自らが確保される側になると逃亡するとは何事ですか。
素直に冷凍刑に処されるべきです(それでは物語が冒頭で終わってしまうので映画になりませんが)。
自身にも法は適用されるとの最低限のモラルすら持ち合わせていない警官が、予知犯罪を取り締まるのは大きな問題です。この程度の人間が予知犯罪取締局の主任を努めるような社会では、予知逮捕を許すべきではないのです。
誰であっても予知逮捕されるのならば、映画のような社会も有りかもしれません。
以下は、ネタバレになります。
システムの中枢に、プリコグと呼ばれる3人の超能力少女たちが使われていたのですが、最後にまったりと普通の女の子らしい生活をしていました。
ラストの雰囲気では予知逮捕システムは廃止されたのでしょう。
すると、結果として世界は元の犯罪多発社会に逆戻りします。それでいいのか。
また、さらに大きな問題は、国家自体が犯罪行為を行っている社会では、まともな意見を発言しているものが逮捕されるのです。
中国のように。
日本のように、権力に歯止めがかかり、かつ犯罪が少ない国であれば監視カメラや顔認証も、一般的な犯罪者を取り締まるのに有効です。
しかし、国家が独裁者を許容し、政権が自由に「犯罪」を作り出せるような社会では、テクノロジーが反論者を一方的に弾圧するばかりです。