今日の中国48 ハリウッド、中国向けに自己検閲しています

ハリウッドも中国には逆らえません。

 

映画好きの人なら最近のハリウッドの傾向がよくわかるはずです。

内容が中国に遠慮したストーリーになっています。

  • 『ゼロ・グラビティ』(2013年)宇宙にはじき出された主人公を、中国宇宙船の「神舟」が地球に帰還させる。
  • 『オデッセイ』(2016年)NASAが、火星に取り残された主人公を中国の技術を借りて助ける。
  • 『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』(2016年)中国軍がちゃっかり地球宇宙軍の重要ポストに入っている。ヒロインのパイロットも中国人。
  • 『ザ・グレート・ウォール』(2016年)題名も舞台もそのまま「万里の長城」。

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『ザ・グレート・ウォール』は制作費に150億円もかけたのに、アメリカ内での興行収入は、約50億円で大コケしたそうです。

しかし、中国国内では4倍の200億円でした。

 

ハリウッドで映画を作る際には、中国政府が認めてくれるように自己検閲しながら制作する必要があるのです。

(中国化進む世界(上)ハリウッド、もう戻れない ソフトパワー、無言の圧力(写真=ロイター) :日本経済新聞)

 米ハリウッドで大作映画の制作者が必ず参照する文書がある。中国政府が映画の公開を認めるかどうかを定めたガイドラインだ。映画制作に30年間携わるロバート・ケーン氏は「企画段階から中国の検閲を意識する」と打ち明ける。

中国国内で上映されなければ、収入が激減する。そのために、中国政府が許可するように企画しなければならないのです。

 

共産党批判は絶対にやってはいけないので、

  • 『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(1997年)中国共産党によるチベットへの侵略がはっきりと描写されています。実在した登山家ハインリヒ・ハラーと若き日のダライ・ラマ14世との交流が描かれる。

などの作品は絶対に上映できません。内容のある良質な映画がどんどん減っていきます。

 

それどころか、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)も中国では上映禁止だとか。「何故?」とまともな国の人間ならば疑問に思います。

「過去に戻って共産党支配を変えられると連想させるから」が理由だとか。無茶苦茶です。

 

ハリウッド映画も情けない状態になったものです。言論の自由より金儲けが大切とは。自由の国の名が泣きます。

セクハラ問題を騒ぐより、中国向けの自己検閲の方がはるかに大きな異常事態であるのですが、アメリカや日本のニュース番組ではほとんど報道していません。

www.nikkei.com

目立つ「アジアンフェース」 (中国化進む世界)
コラム(国際・アジア)
2018/3/26 2:00日本経済新聞 電子版

 もし自分が恋に落ちた相手が桁違いの大富豪だったら――。ハリウッド映画では何度も見たことがあるようなプロットだが、今年8月に全米で公開されるある作品にはこれまでと異なる大きな特徴がある。全登場人物にアジア系俳優がキャスティングされていることだ。タイトルはずばり「クレイジー・リッチ・アジアンズ」。

 恋人がシンガポール華僑の大金持ちと知らずに恋に落ちた中国系米国人の女性がヒロインのコメディーで、全米でベストセラーとなった同名原作の実写化だ。配給は大手のワーナー・ブラザースが手掛ける。

 当初ヒロインの女性に白人女優をキャスティングする動きがあったが、却下された。登場人物を全て白人にしてしまう「ホワイト・ウオッシング」は長い間ハリウッドの課題だったが、最近はむしろキャストに「アジアンフェース」を増やす動きが目立つ。背景には、巨大な中国映画市場への意識がある。

 中国の映画市場は2020年ごろまでに米国を抜き、世界最大になるといわれる。一方で、北米地区の興行収入は頭打ち状態が続く。新たな収入源としてハリウッドの視線が中国に向いた時、「ソフトパワー」を通じて中国思想を世界に広げたい中国の思惑が一致し、中国マネーがハリウッドに流れ込み始めた。

 「クレイジー・リッチ・アジアンズ」を手掛けた映画制作会社SKグローバルのジョン・ペノッティ社長は「中国市場の話抜きでは、映画を作ることは難しい」と語る。同社も17年に中国ファンドから出資を受けた。ロサンゼルスのサンタモニカに構えるオフィスにも、シンガポールから派遣されたアジア担当の社員が常駐する。

 「クレイジー・リッチ・アジアンズ」は、米有力エンタメ雑誌「エンターテインメント・ウィークリー」の表紙巻頭特集が組まれるなど、公開前からハリウッドの大作映画として堂々たる扱いを受けている。ペノッティ氏は「そもそもストーリーが抜群に面白い。登場人物が全員黒人やラテン系だったとしても同じ。世界中の人に楽しんでもらいたい」と期待する。

 もっとも中国の映画を通じたソフトパワー戦略は米国で好意的に受け止められているとは言いがたい。たとえば、16年公開の米中合作映画「ザ・グレート・ウォール」。米人気俳優のマット・デイモンが主演し、万里の長城を舞台に伝説の怪物と戦うというストーリーだ。中国の人気俳優も多数出演し、中国で撮影した。

 1.5億ドルの大金を投じて製作されたが、中国以外の地域では客足が伸び悩んだ。米国での最終的な興行収入は4500万ドル程度にとどまり、「大コケ」映画認定を受けてしまった。主役のマット・デイモンが17年のアカデミー賞で、壇上の司会者から「中国のポニーテール映画に出ていたね」と声をかけられると、会場は大きな笑いに包まれた。

 米議会は中国企業が米メディアへの支配力を強めることに反対している。ハリウッドと中国の蜜月がいつまで続くかはみえない。

 (ニューヨーク=平野麻理子)