地獄の黙示録特別完全版 日本版予告編 Apocalypse Now Redux Japan Trailer
何度観ても、美しすぎる戦闘シーン。
海上すれすれに戦闘ヘリコプターが並び北ベトナム軍の陣地を攻撃する。
その際に(たぶん撮影時の偶然だろうが)、海上での爆発の結果できた虹が、黒い爆煙の中に現れる。
映画の神が、戦闘シーンを撮るコッポラ監督に偶然の美を与えたのだ。
ワーグナーのワルキューレの騎行が、人の内にある攻撃衝動を駆り立てる。
彼、リヒャルト・ワーグナーは、ユダヤ人嫌いで人種差別主義の作曲者だった。
ただし、戦争映画ではない。原作はアフリカのコンゴ奥地へ向かう主人公の話なので、東南アジア人とアフリカ人の区別がつかない現地人の描写になってしまった。
白塗りのカンボジア人はいないでしょう。
戦争映画でもなく、ベトナム戦争を描いた映画でもない。
アメリカ軍は「やぁやぁ我こそはビル・キルゴア中佐の守、第一騎兵隊なり~」と名乗りを上げてから突撃しない。
中世日本の武士ではないのだ。
あんなことをすれば、無駄に兵を危険にさらしたとして軍規で処罰されるだろう。
第2次世界大戦アフリカ戦を描いた映画『パットン大戦車軍団』の中に、司令官ジョージ・パットン将軍が、砲弾神経症の傷病兵を殴ったため、被害にあった兵と現場にいた兵士達に謝罪している事実を知らないのだろうか。
しかもこの話はベトナム戦争より20年以上も前の話である。
アメリカ軍では、たとえ司令官であっても軍規を守る義務があるのだ。
しかも、負ける戦争をしてはいけない。彼らアメリカ人は、初めから負けるとわかっている戦はしない。旧日本陸軍ではないのだ。
まず高高度か遠距離から徹底した爆撃か砲撃を行い、敵の重火器などの陣地を破壊してからヘリを投入するだろう。
初めからヘリで攻撃すれば映画で描かれたような被害では済まない。
ベトナム戦争ではアメリカ軍のヘリコプターは「空飛ぶガラスのエレベーター」と呼ばれていたのだ。
北ベトナム軍の陣地からほとんど迎撃してこないのもおかしい。
ほとんどの兵士がAKらしき自動小銃で武装している陣地を攻撃すれば、あの当時のヘリは大部分が撃墜される。しかも音楽を流して、あらかじめ攻撃することを伝えているのだからもっと落とされただろう。
北ベトナム軍を舐めすぎた映画。
だから戦争映画ではない。
原作は『闇の奥』だ。古典扱いされているが、古典とされていなければまず読まなかっただろう作品である。
ひと言で言えば、退屈だ。