「林檎の思ひで」とこんにゃくゼリーの冤罪。

20代の頃の話。

仕事の徹夜明けで、疲れきっていた。
やっと眠れる安心感から、ボーッと放心していた。

 

女性の先輩が「田舎から送ってきたの」と林檎をむいてくれた。
見ていると、変わったむき方をしている。
皮をむいて、四分割し、芯を取りその後、
更に厚めのいちょう切りにし始めた。

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先輩に言わせると「皆、疲れているから小さいほうが良いでしょう」
とのことだ。
なるほど。

 

ところが、このいちょう切り林檎が大変な悲劇をもたらす。

 

爪楊枝で3切れ目を食べた時のことだ。
ほとんど噛まずに飲み込んでいたのが原因か、いちょう切り林檎のひとつが、喉に詰まった。

 

喉の途中で縦になったのか、ひどく違和感がある。
水を飲む、ジュースを飲む、などしても全く降りる気配がない。

 

最初は「林檎が喉に詰まっちゃったよ」と周囲の同僚と笑っていたのが、
だんだんと深刻な事態になってきた。

 

息が苦しくなってきたのだ。
多分、異物が詰まった食道が狭くなってきたのだろう。

 

洗面所に行って何とか吐き出そうとするが、徒労に終わる。

 

林檎をむいてくれた先輩が「ちょっと大丈夫?顔色が真っ青よ」
背中を叩いてくれたが無駄だった。

 

「助けて下さい」とか細い声で訴える私を、慌てて救急病院に連れて行ってくれた。

救急科の医者は
「なに~?林檎が喉に詰まった?そんなことあるのか」と半笑いで症状を聞いていてる。
腹が立ったが、それどころではない。こっちは死にそうだ。

 

レントゲン写真を撮られている最中に、強烈な吐き気が襲ってきた。
そして、リバースした。
林檎の欠片と昨夜食べたカレーやらカップラーメンなどがひどい臭気と共に、レントゲン室一面に広がった。

 

今でも、辛いものを食べたりすると喉が痛む。
林檎が喉に傷をつけたのではないか。
遠い昔の「林檎の思ひで」である。

 

ここから本題に入る。
こんにゃくゼリーは冤罪である。

Wikipediaより

事故の発生件数・発生確率
13年間で22件という死亡件数は、「餅」「ご飯」「パン」などを喉に詰まらせ窒息死する事故の件数と比較すると極めて少なく、毎年4,000件以上にもなる食品による窒息死亡事故のうち平均1.7人程度(0.04パーセント)を占めているに過ぎないため、こんにゃくゼリーだけを問題視することには異論もある。 後に、内閣府の食品安全委員会が特定の食品類を1億回口に入れた場合に窒息死する頻度を推計したところ、こんにゃくゼリーによる死亡リスクは0.16?0.33人とされ、飴類(1.0?2.7人)と同程度としつつも、ワースト1位の餅(6.8?7.6人)と4位のパン(0.25人)の間に位置する危険度があるという結果を発表している。死亡事故のみならず軽症や中等症で済んだ事故を含めた統計では、こんにゃくゼリーによる事故が窒息事故全体に占める件数は更に少ないものとなるが[9]、それは逆に言えば、いざ喉に詰まらせた場合に軽傷で済んでいる者が少なく死亡率が高いという解釈もできる。消費者庁はこんにゃくゼリーを喉に詰まらせた場合の重症率を85.7%(7件中6人)と算出し、2位のしらたき・糸こんにゃく(71.4%、7件中5人)を上回り、カステラやヨーグルトと同程度の重症率でしかない餅(54.7%、406件中222人)よりもはるかに危険な食べ物であるという見解を発表しているが、この統計の手法を疑問視する意見もある。

 簡単にまとめると、1995年から2008年までの13年間に22件の死亡事故があったが

実はこの数字は、こんにゃくゼリーが、ほとんど窒息死事故を起こしていない事を表している。

毎年平均1.7人程度(0.04パーセント)ならばほとんど無視してもいい数字である。
何故か。
餅で窒息死する人は、毎年約600人いるのだ。
600÷1.7=352.9411764705882。
つまり、約353倍も餅の方が危険なのだ。

しかも、餅のパッケージには、こんにゃくゼリーのような大きな警告文はない。

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こんにゃくゼリーパッシングは明らかな営業妨害だった。

ところで、林檎はさすがに統計記録になかった。

死んでいたら珍しい人になっていただろう。

 

『14歳からのリスク学』山本弘著
第2章「こんにゃく入りカップゼリーの不名誉──新しいものを警戒する心理」にわかりやすく書いてありました。

 

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