『太陽に灼かれて』第3部『遙かなる勝利へ』。
『太陽に灼かれて』も完結である。
映画はやはり、悲劇に終わる。
ナージャは父親コトフと再会を果たすが、父親は娘の代わりに地雷を踏む。
ヒトラーと戦った独ソ戦は、大祖国戦争と呼ばれている。
この戦争の時代背景は1940年代だが、
128年遡ると、1812年6月ロシアは、フランスのナポレオンに攻め込まれている。
これは、祖国戦争と呼ばれた。ナポレオンはモスクワに到達したが、ロシア軍の焦土作戦によって、モスクワを焼かれた。建物の三分の二を焼失して、一面は焼け野原となる。
結果、ナポレオン軍は敗退する。
ロシア軍はナポレオン軍を追撃して、フランスの首都パリにまで到達する。
このことが後に、ロシアの専制体制を揺るがすのだから、皮肉なものである。
パリに入城したのは貴族将校たちで、自分たちの国とは違う、自由な市民と政治体制に触れることとなった。
後にこの貴族将校たちが、秘密結社を組織して、農奴制の廃止や政治体制の革新を叫び蜂起した。
有名な、デカブリストの乱である。
ちなみに、デカブリとはロシア語で12月のこと。
1825年12月に蜂起したことからデカブリストと呼ばれた。
ロシア語で聞くと、「デカブリ」というより「ジカブリィ」に聞こえる。
☆あしやのロシア語講座☆ロシア語で月の名前は何っていいますか?
デカブリストの乱は鎮圧されたが、結果として1917年のロシア革命につながる。
ロシアの兵士が、西側諸国の自由な政治体制や文化に触れると、自国が発展途上国であることを知ってしまうのだ。
スターリンはその歴史を熟知していた。
それ故に、ドイツ軍に捕らわれて捕虜になった兵士達は、大部分が強制収容所に送られた。
映画『遙かなる勝利へ』では、敵前逃亡したとされる男達15000人に、一本の棍棒を持たせて要塞へ突撃させようとする。
スターリンがコトフを師団長に戻した上で、コトフの責任において作戦を実行させる。
映画の要塞戦は、フィクションだが、現実はもっと酷い。
自国民の犠牲においてロシアはドイツに勝利できたのだ。