映画『レニングラード』について。前回の続き。
(映画『レニングラード』死ぬまでに、一度は行ってみたい都市(現サンクトペテルブルク)
映画的には地味な背景だが、女性2人を主人公にしたことで、飢餓のさなかでも華やかさが出ている。
イギリスからの女性記者とレニングラードの女性警察官である。
左が警察官。右が記者。
女性記者は、実は亡命した白衛軍の将軍の娘だった。白衛軍とは、ソビエト共産党が組織した赤軍に対抗するため組織された軍隊である。貴族階級が中心となっていた。本人は、自分の故郷を見たいとの思いだけで、記者としてレニングラードに来たのだが、身元がバレて逮捕されそうになる。逮捕されればもちろん処刑である。
女性警察官は、前線で敗走しようとした兵士を背後から銃撃し督戦していたので、多分、NKVD(秘密警察)の下部組織の一員だと思われる。女性記者を助けてしまったことで、国を越えた友情を感じるようになる。
当時のソビエト連邦は徹底した秘密主義で、レニングラードの市民が飢えていることすら外国に知らせないようにしていた。
また、スターリンは、レーニンの名前がついたこの都市には、非常に冷淡だった。
スターリンが派遣したジューコフ将軍は、市民がレニングラードから脱出することを禁じた。市民は、ほとんど餓死するままに置かれた。
そのため、解放されるまで、882日間もかかったのだ。
ラストに女性記者の上司(恋人でもある)が、第2次世界大戦終了20年後の1965年にレニングラードを再訪する。
そこで、ある人物に出会うのだが、映画を観てる側が「お前、生きとったのか」と驚くような場面がある。
そして犠牲者の名を刻んだ石碑。
主人公2人の女性の名前も刻まれている。
約150万人が死亡したといわれている。
「交響曲第7番 レニングラード」ショスタコーヴィチ作曲が有名
『レニングラード』といば、ショスタコーヴィチの「交響曲第7番」も有名である。
作曲者自身が、レニングラードに包囲されている時作曲した交響曲。
ドイツの北方軍集団が迫る様子を描いている。
ただし、少し前衛的すぎるように感じる。抽象画を観ているようで、ドイツ軍の進撃がわかりにくいのだ。スターリンにもあまり好かれていなかったらしい。
ショスタコーヴィチ 交響曲第7番「レニングラード」より第1楽章
チャイコフスキーの『1812年(序曲)』のほうが写実的でわかりやすい。
ナポレオン率いるフランス軍とロシア軍との戦い、そしてロシアの勝利を描いている。
ショスタコーヴィチでは『交響曲第5番「革命」第4楽章』がおすすめ。
思想的な垣根を越えて、元気が出ます。