いい意味で期待を裏切る映画
期待せずに何となく観た映画に驚かされることがある。
その面白さに引き込まれて、最後まで観てしまう。
その典型的な映画『アポカリプト』。
この映画は、ある意味ホラー映画である。
暴力シーンのため、R-15指定されている。
スプラッタ・ホラー好きも満足出来る。
監督はメル・ギブソン。あのスプラッタ宗教映画『パッション』の監督もしている。
身体的に痛い映画が好きなようだ。
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内容とメル・ギブソン監督の白人擁護
今の中米メキシコ南部である。
主人公のジャガーパウが、マヤ帝国の兵士に村を襲われ、父親や村民も殺される。
仲間とともに帝国の都市に連れて行かれるが、それは人身御供のためだった。
このシーンがまたエグい。仲間達が、生きたまま心臓を取り出され、首のない死体が祭壇上から落とされる。
Templo y ceremonia maya en Apocalypto (Mel Gibson, 2006)
深読みすれば、マヤ文明はこんなに残酷なのだと強調したかったのだろう。
事実、こんなことをしていたかは、白人達が文明を絶滅させたため、情報の裏の取りようがない。絶滅させた者の一方的な判断である。
脱出に成功したジャガーパウは、村の井戸に隠した妻と子供を助けるために帰村しようとするが、追手の兵士達が追撃してくる。
追手のリーダーのおっちゃんがいい味を出している。
主人公に息子を殺された怒りのため、
「生きたまま皮をはいでやる」とどこまでも追ってくる。
このおっちゃんにも感情移入ができるので、物語としては勧善懲悪ではなく、一種の決闘のように見える。
そこがまた良い。
ただし、観終わって冷静に考えてみると、メル・ギブソン監督の白人擁護が鼻につく。
冒頭に、
「文明が征服される根本的原因は内部からの崩壊である」W・デュラント
との字幕が出るが、明らかにこれは、
マヤ文明の崩壊は彼らがこんなに残酷なことをしていたからですよ
とのメッセージだろう。
そりゃ無いでしょう。あんたら(正確にはスペイン人)が侵略したからじゃん。
しかし、歴史的事実には知らん顔をしながら、自信満々に観客が興奮できる物語を映像化する手腕にうならされる。
メル・ギブソンは映画監督としては一流だ。
人としてはどうか知らないが。