映画『沈黙-サイレンス-』を観ました。
マーチン・スコセッシ監督は好きなのです。
『タクシードライバー』は傑作です。
同時に、遠藤周作の小説『沈黙』から受けた感動は、人生で最も大きな衝撃でした。
ですから、期待と不安が半々でした。
結果、感想としては、70点といったところでしょうか。
文句ではないのです。しかし、一番気になったのはキチジロー役の窪塚洋介です。彼の演技は素晴らしいのですが、キャラクターが微妙に原作と違います。
キチジローはもっと三枚目のはず
窪塚洋介がヤンチャなイケメンすぎます。
キリスト教徒として神を信じながら、臆病さ故に何度も踏み絵を踏む、弱き男。
その弱さは、ロドリゴ司祭をも裏切ってしまう。
原作からのイメージでは、もっとおどおどした雰囲気の三枚目の役者が適任でしょう。
例えば、大泉洋とか柄本時生(柄本明の息子)とか。
みすぼらしい格好をしていても、イケメンが目立ちすぎて、気になります。
原作を知らない人からすると、キチジローの置かれた意味がよく分からないのでは、とも思えます。
その他の役者は、原作に忠実
小松菜奈が、隠れキリシタンの村人役で味があります。洗礼名モニカです。
原作でも重要なサブキャラクターですので、小松菜奈の存在感が際立っていました。
あばた面のメイクをして、貧乏ながらも健気な娘を演じています。
自らも捕らえられ縛られているのに、ロドリゴ司祭に懐から瓜を出して渡す。
死を恐れていない。何故ならばキリスト教を信じて(裏切らずに)死ねば苦しみのないハライソ(天国)に行けるからと教えられたから。年貢や苦役、迫害のない世界へと。
浅野忠信の通辞(通訳)役も素晴らしい。
インテリっぽく、かつてキリスト教徒だった日本人の批判者として、ロドリゴ司祭を精神的に追い詰めてゆきます。
おかしな日本語を話す日本人は出ないのは評価できます
おかしな日本語を話す日本人がいません。
日本と中国を混同したような建物や服装もない。
これは、アメリカ映画としては相当に評価してもいいことです。
日本人が観ても、ほとんど違和感がありません。