あらすじ
メキシコと国境を接するアリゾナ州が舞台。
FBI捜査官のケイト・メイサー(エミリー・ブラント)はメキシコの麻薬カルテルの犯罪に取り組んでいた。しかし、法的に彼女の活動はアメリカ国内でしか行えず、後手にまわるばかりだった。
そんな中、上司の推薦により、国防総省のマット・グレイヴァー率いるチームに参加することになる。
チーム内には謎のコロンビア人、アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)がおり、彼らのチームは法を無視してメキシコに侵入を繰り返していた。
ケイトは抗議するが、相手にされない。
捕まえた犯罪者を拷問し、メキシコ領に入ってもためらわずに敵を射殺する。
アレハンドロは、妻子を殺された復讐のためだけにアメリカと協力していたのだ。
アメリカへの麻薬流入。コロンビアからメキシコへ
かつて、アメリカへ流入していた麻薬は、そのほとんどが南米のコロンビアからフロリダ経由でした。
しかし、1990年代にコロンビアの麻薬カルテルが壊滅してからは、メキシコ経由となりメキシコ麻薬カルテルが主導権を取るようになったのです。
映画内でコロンビア人のアレハンドロがメキシコ麻薬カルテルのボスを殺したのは、復讐のためでしたが、アメリカとしてはメキシコ麻薬カルテルの弱体化を狙ったのです。
ケイトとアレハンドロの関係が渋い
「嘆きの検察官」と呼ばれるコロンビア人、アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)の存在感が強烈です。コロンビア麻薬カルテルと手を組んでいます。
すべては復讐のためにです。
彼は、メキシコ麻薬カルテルに妻子を殺害された過去を持っています。妻は首を切り落とされて、娘は酸のプールに投げ込まれた。
復讐の鬼、復讐のためならば手段を選ばない。
しかし、その残忍さ故に自身の心も壊れている。
そんな彼が、ケイトには微かながらも優しさを見せます。
殺された娘に彼女が似ているからと。
ラストには、違法な作戦を暴露するつもりだったケイトを脅します。
作戦は合法的に行われたとの書類にサインするか、「自殺」するかと選択を迫る。
それでも彼はケイトを殺したくない。
「怯えると少女のようだな」
「奴らに殺された娘を思い出す」
泣きながらサインした彼女に、
「小さな町へ行け。まだ法の秩序が残る場所へ」
「君は狼じゃない。ここは狼が住む地だ」
と最後に、彼なりの優しい言葉をかけて去るのです。
救いのない物語の中で、この同情されることのない非道な男が最も魅力的に描かれていました。