今日のプーチンさん35 天然ガス事業、日本企業に出資要請

ロシアのLNG企業(ノバテク)が、日本の三菱商事と三井物産に天然ガス事業への出資を要請しています。

総額で3~4兆円規模の大事業になるそうです。

北方領土返還への布石なのでしょう。

「奪った領土はタダでは返さない」魂胆がまる見えです。

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鈴木宗男のびっくり発言

かつて、元衆議院議員の鈴木宗男がこんな発言をしていました。

ムネオの日記(2013年7月16日)より 

新党大地は原発に替わるエネルギーは明確に「ロシア」と話す。ロシアからの天然ガス、油のパイプラインをサハリンから北海道に引き、それを本州まで伸ばす。油・天然ガスLNGを船で運ぶ手段もある。
 ウラジオストックから秋田・新潟・富山・石川・福井とパイプラインを引くこともできる。
 世界一のエネルギー資源大国ロシアとの協力が日本の将来につながると説明すると皆さん判ってくれる。

要するに 「国家の原動力であるエネルギーをまるまるロシアに依存せよ」との内容なのです。

これを読んだ時には、驚きを通りこして呆れてしまいました。

この記事は2013年に書かれたものなのですが、たぶん今でも同じ主張であると思われます。

北方領土交渉に(ロシア有利に)前向きな鈴木氏の意見は参考程度にしておいて、真剣に聞くべきではありません。

 

ロシアからパイプラインを日本本土に引けば、領海内にインフラを設営させることになり、ロシア軍を日本海に展開させることすら可能になるのです。

そうなれば、日本は米国だけではなくロシアの属国にもなってしまいます。

明治時代の戦争は何だったのでしょうか。

愚かなのはドイツも同じ

ドイツもロシアからバルト海にパイプラインを設営させてエネルギーを供給する予定です。ほぼ決定しています。

東欧のポーランドやウクライナを経由せずにバルト海を通すことで、ドイツとロシアに脅かされている東欧を分断することが目的のようです。

経済を制するやり取りは事実上の戦争行為と同じなのです。

www.nikkei.com

ロシアガス大手、三井物産などに出資要請

北極圏でLNG開発 政府は領土交渉にらむ

2019/2/20付日本経済新聞 朝刊

ロシアのガス大手ノバテクが三菱商事と三井物産に北極圏の液化天然ガス(LNG=総合2面きょうのことば)事業に1割を出資するよう打診していることが分かった。総額3兆~4兆円を見込む巨大事業で、日本政府は両社が参画を決めれば出資額の5割を国費で賄う検討に入った。安倍政権は大型の経済協力で北方領土交渉の前進につながる環境を醸成したい考えだが、ロシアへの国際社会の制裁が続く中で思惑通りに進むかは不透明だ。

 

ノバテクは北極圏にあるロシア北部ヤマルでLNG基地の第2弾にあたる「アークティック(北極)2」の建設を計画する。2020年にも着工し、22~23年から年2千万トン程度を産出する予定だ。事業費は最大で3兆~4兆円になる可能性がある。第1弾は17年12月に生産を始めた。

 

ノバテクはロシアの独立系の民間ガス大手でプーチン大統領と近いとされる。アークティック2には6割を出資する方針で、すでに権益の売却が決まった仏石油大手トタルも10%を出資する。残りの出資を日本、サウジアラビア、中国の企業に打診したとみられる。

 

ノバテクは19年春の合意に向けて三菱商事と三井物産への働きかけを強めている。日本政府関係者によると1月の日ロ首脳会談でプーチン大統領は安倍晋三首相に日本企業が早期に決断するよう期待感を示したという。ロシア側は減税などの優遇策を示し両社に協力を促しているようだ。

 

日本政府は三菱商事と三井物産が参画を決断すれば、独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じて支援する。数千億円規模に上る出資額の5割を賄う。経済産業省と財務省は財源にエネルギー特別会計の活用などを検討。国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)などの政策金融でも後押しする。

 

ロシアでのエネルギー開発を巡っては三井物産と三菱商事がサハリン沖の「サハリン2」の事業に参加しており、拡張も検討中だ。ヤマルではノバテクがLNGの積み替え基地を建設する計画もあり丸紅や商船三井などが参加を協議している。

 

新たなLNG開発は調達先を多様化する資源戦略に加え、安倍首相が16年にプーチン氏に提案した「8項目の経済協力プラン」に沿ったものだ。経済協力が領土交渉の進展につながるとする安倍政権の期待は大きい。

 

ただ北極海航路による輸送が高コストなのに加え、ロシアビジネスの難しさもある。三井物産などは「サハリン2」で過去に環境問題を口実に権益の過半を国営エネルギー会社のガスプロムに譲渡させられた。

 

ウクライナ領クリミア半島の武力併合で米欧が経済制裁を続けるロシアへの協力に国際社会が反発する恐れもある。

 

日本政府関係者は「官側の期待先行は否定できない」と認める。三井物産と三菱商事は採算性を慎重に見極めて出資の是非を判断する考えだ。

www.nikkei.com

独ロの新パイプラインはロシアのワナ(The Economist)
ヨーロッパ The Economist
2019/2/20 2:00

The Economist

利益を生まない巨大プロジェクトが進められている場合、理由が2つ考えられる。出資者が愚かであるか、あるいは狙いが他にあるかだ。

 

ロシアのプーチン大統領は決して愚かではない。したがって、同氏が注力する天然ガスを送るパイプライン計画「ノルドストリーム2」は、ビジネスが本当の目的ではないと考えなければならない。そして愚かなのは欧州各国、とりわけドイツだ。

 

■新たに建設する必要がないパイプライン

欧州連合(EU)は12日、ドイツから圧力を受け続けた末、ノルドストリーム2に対し、EUのエネルギー規制をどのように適用するかで合意した(編集注、この規制の適用の仕方次第ではプロジェクトの続行が危ぶまれていた)。だが合意にこぎ着けたことで、建設計画に遅れが出る可能性はあるものの、続行することがほぼ確実となった。

 

総工費110億ドル(約1兆2100億円)、長さ1200キロに及ぶ同パイプラインは、ロシア北西部のビボルグからバルト海を通ってドイツ北東部のグライフスバルトまでをつなぐ。建設は昨年始まり、この年末までに完成する可能性もある。だが経済的に見れば、必要のないパイプラインだ。

 

今のところ、ロシア産天然ガスは、主にウクライナとポーランドを通って東から西へ送られるか、「ノルドストリーム1」(2011年11月稼働)経由でドイツまで届けられており、特に輸送能力が不足しているわけではない。新規パイプラインを必要とするほど欧州で輸入天然ガスへの需要が近く高まるとも予想されていない。というのも、エネルギー効率が改善している上、製造業による需要は低迷し、再生可能エネルギーが普及しつつあるためだ。

 

意外でも何でもないが、ロシア政府が株式の過半数を握るエネルギー大手ガスプロムが、ノルドストリーム2の唯一の株主だ。ノルドストリーム2の本当の目的は政治的なものだ。それには主に3つの側面がある。

 

第1に、ノルドストリーム2によってポーランドとウクライナは直接的に痛手を負うことになる。プーチン氏は両国を毛嫌いしており、後者には14年に侵攻している。現在、ロシアで生産されている欧州向け天然ガスの大半は、ウクライナ経由だ。ノルドストリーム2が完成すれば、ロシアはドイツに迷惑をかけずにウクライナへの供給を削減できる。また、ウクライナが天然ガスを抜き取っているとして、ロシアとの争いにドイツを巻き込む事態も防げる。加えて、ウクライナ政府は輸送費の収入を得られなくなる。ノルドストリーム2がなければ、ロシアがウクライナで悪さをしたくても、自国経済への波及を考えるとできることが限られる。つまり、ウクライナ(程度の差はあれ、同じ理由からポーランドも同様だ)を迂回することが狙いなのだ(中止となったパイプライン計画「サウスストリーム」も同じ狙いだった)。

 

また、ノルドストリーム2によって、ロシアはバルト海地域にインフラ設備を所有することになる。これは、現地のロシア軍駐留を増強する言い訳になり得る。だからこそ、バルト3国や北欧諸国、ポーランドは懸念しているのだ。

 

■西側の分断がプーチン氏の狙い

第2に、ノルドストリーム2は、欧州のロシア産エネルギーへの依存度を高めることになる。中継国を迂回することで輸送料を支払わなくてすむため、顧客に請求する金額を抑えられる。これは、少なくとも短期的には、ドイツのエネルギー消費者にとって良い話だ。だが、ロシアへの依存度を高めることはEUの方針に反する。EUは過去10年、一つには安全保障上の理由からエネルギー調達先の多様化を進めてきた。それだけではない。最終消費者にもっと公正な価格でガスを提供すべく、天然ガス供給各社に、ガスの価格や輸送料などのコストを開示し、透明性を高めるよう求めてきた。各国政府による補助金の提供を防ぎ、適正な競争を促すのが狙いだ。

 

冒頭の12日に決まったのは、ノルドストリーム2のようにEU域外を起点とするパイプラインにも、このルールを適用するという方針だ。だが、この市場メカニズムを機能させるべく、エネルギーを巡る規制の順守を監督する責任は、ドイツの規制当局が負うことになった。欧州委員会もある程度監督する権限は確保したが、全くないよりはましとはいえ、当初求めていたスタンスからは大幅な後退となった。

 

メルケル独首相は、欧州の安全保障よりも安価なエネルギーを重視しているようだ。これは軽率な判断だ。06年と09年にロシアがウクライナを経由する天然ガスの量を制限した時に明らかになった通り、ロシアは天然ガスの供給をいつでも政治的な武器に使えると考えている。

 

第3にノルドストリーム2は、西側の同盟国を分断させ、東欧諸国を多くの西欧諸国と対立させ、この計画に長く反対してきた米国と欧州の間に亀裂を生んできた。ドイツに米国産天然ガスを輸入させたいトランプ米大統領は、このパイプライン計画に参加している企業にこれまでも制裁を科すことをちらつかせてきたが、今後科す可能性がある。

 

ノルドストリーム2は要するに、ウクライナやポーランド、そしてバルト3国の安全保障への懸念を高め、EUのエネルギー政策を骨抜きにし、ロシアに西欧を脅すためのより強力な手段を与え、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の間に不和の種をまく。プーチン氏にとって、わずか110億ドルでこれだけの問題を引き起こせるなら大した負担ではない。だが、同プロジェクトは欧州にとってはワナだ。

 

■シュレーダー元首相を巡る暗い疑惑

理解しがたいのは、なぜドイツがこのワナに陥ったのか、そしてフランスもドイツに屈し、同調するようになってしまったのかだ。ロシアに対しては、ウクライナ侵攻以降、圧力をかけるようEUの中で誰よりも強く働きかけてきたのはメルケル氏だ。同氏は、11年にドイツの脱原発という誤った判断をしたことで、国内企業の(エネルギーコストの上昇や二酸化炭素排出削減が難しくなったといった)不満が高まっており、それに応えることを最重要視しているのかもしれない。

 

あるいは、もっと暗い背景を含む話かもしれない。メルケル氏にとって、連立政権を維持するにはドイツ社会民主党(SPD)の協力が不可欠だ。そのSPDはノルドストリーム1と2を強固に支持している。今もSPDの党員であるシュレーダー元首相は現在、ノルドストリーム2とロシア国営石油大手ロスネフチ双方の取締役を務めている。

 

このことがドイツの対ロシア政策に影響を与えていると証明はされていないが、多くのドイツ人はその可能性に危機感を募らせている。そして、そうした疑念が浮上することで、その国が揺さぶられるのを常に喜ぶのがプーチン氏である。(c)2019 The Economist Newspaper Limited. February 16, 2019 All rights reserved.