米国モアハウス大学の卒業式での話。
IT分野への投資会社を経営する大金持ちの、ロバート・スミス氏がスピーチの中で、卒業生全員の学費ローンを肩代わりするとのサプライズ発言がありました。
モアハウス大学は男子校であり、大部分が黒人の生徒である大学。卒業生にはキング牧師もいるそうです。
400人の卒業生に約44億円をあげたので、
一人あたり、約1千100万円を「卒業祝い」にしたことになります。
「タダほど高いものはない」と思う
正直言って、あまり賛成できません。そんなに感動できない。
アメリカ人の学費ローン返済が過酷なことはよく知られています。
就職してから、300万から400万円のローンを返済する必要があり、学生によっては数千万円のローンを抱えている卒業生もいる。
社会人になって間もない時期に、この額の返済をしなければならない大変さは十分にわかります。
しかし、自分の能力を作り上げるために支払わなければならない学費を、他人に全額出してもらって価値があるのでしょうか。
せめて、50%か30%は払わせるべきです。
スミス氏自身はコロンビア大学の卒業生で、学費は自身が支払ったのでしょう。
資産家である彼の社会的地位は、その上に築かれた現在です。
100円ショップで購入した筆記用具は雑に扱うが、高額で買った万年筆は大切にします。
これは、心理学でも実証されている現象であり、
「タダより高いものはない」効果なのです。
行動経済学者のダン・アリエリーによると
「『値段ゼロ』というのは単なる価格ではなく、不合理な興奮の源を生み出す感情のホットボタンである」
とか。
合理的に考えれば、大学で学んだ体験は、タダであっても卒業後苦労して払っても変わることがないはずです。
ところが、人生においては「タダで良かった体験」が「大学生活の価値を下げるボタン」を押してしまう可能性があります。
個人的体験でも、
アマゾンKindle本より紙の本(多分リアルに手元に残るから)。
Kindle無料本より有料本のほうが記憶に残りやすいのが事実です。
無料だと何となくですが、価値が下がるよう無意識に判断してしまうからでしょう。
もっとも、そんなにムキになることではないかもしれません。
米国の話なので。
「卒業祝い」借金肩代わり 総額44億円超か、米大学で資産家
2019.5.21 12:05国際米州
米南部ジョージア州アトランタのモアハウス大で19日に行われた卒業式で、スピーチした資産家が卒業約400人全員の学生ローンを肩代わりすると表明した。中には数千万円のローンを返済予定だった卒業生もおり、予期せぬ「卒業祝い」に会場は大歓声に包まれた。AP通信によると、ローンの総額は4千万ドル(約44億円)に上る可能性がある。
資産家はIT分野の投資会社を経営するロバート・スミス氏。「誰にもアメリカン・ドリームの機会はある。それを言葉と行動で示そう」と述べて肩代わりを表明した。卒業生たちは口を大きく開けて驚いた後、笑顔で大きな拍手をして喜んだ。うれしさの余り、泣きだす生徒もいた。
モアハウス大は男子ばかりの私立大で大半の学生が黒人。卒業生に公民権運動の指導者キング牧師がいる。スミス氏も黒人で、この日に同大から名誉博士号を受けた。米国は大学の学費が高騰し、卒業後に多くの若者が返済に苦しむことが社会問題化している。モアハウス大では卒業時に3万~4万ドルのローンを抱える学生が多いという。
米国の富豪、ロバート・スミスは5月19日、ジョージア州アトランタにあるモアハウス大学の卒業式で行った演説の中で、卒業生たちが抱える学生ローンの返済を肩代わりすることを約束した。それは、出席していた学生たちに大きな衝撃を与えた。
卒業生たちに向けて講演を行う人が若者の人生を変える得ることを、スミスはよく知っている。自分自身の卒業式で演説した人が、自らの人生を変えたからだ。
コロンビア大学ビジネススクールを1994年に卒業したスミスは、マーケティングの分野でキャリアを築きたいと考えていた。化学エンジニアとしてクラフト・ゼネラルフーヅ(現クラフト・ハインツ)やグッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニーなどで製品開発に携わった経験を持つスミスにとって、ウォール街で働くことや投資家になることは、全く頭になかった。
スミスの卒業式で講演を行ったのは、アフリカ系米国人の経営者が率いる投資銀行の先駆けであるユーテンダル・グループの創業者、ジョン・ユーテンダルだった。卒業式の後、スミスを昼食に誘ったユーテンダルは、彼に投資銀行で働くことを勧めた。スミスが金融大手ゴールドマン・サックスで職を得ることになったのは、ユーテンダルの助けがあったからだ。