室生犀星のこと 日経新聞夕刊「文学周遊」から
好きな歌人のひとり。
「犀星」はもちろんペンネームだ。
本名は、室生照道。この名前も古風でいい名前である。
少年時代にはよくあることだが、やたらと望遠鏡が欲しくなる。
私も例にもれず、大学に入ってから高価な望遠鏡を買った。
見かけも格好いい。
天文研究会にも所属していたが、別に大した活動はしていなかった。
1985年に接近した、ハレー彗星を見ようとしていたのだ。
何日も夜明けまで頑張ったのだが、結局、見えなかった。
街が明るすぎた。
そんなこんなで、星が好き→星がついた人も好きになる。
室生犀星、石川県金沢市にある犀川の「犀」の1字を入れたようだ。
彼は、私生児で義母からあまり好かれていなかったらしい。
学業は優秀だったが、高等小学校を3年で中退させられている。
うつくしき川は流れたり
そのほとりに我は住みぬ
春は春、なつはなつの
花つける堤に座りて
こまやけき本のなさけと愛とを知りぬ
いまもその川ながれ
美しき微風ととも
蒼き波たたへたり
日経夕刊の筆者は「郷土の美をたたえる率直な心が読み取れる」
と記しているが、
私が感じた「犀川」は、犀星の心の中だけに存在する川であるように思えた。
「そのほとりに我は住みぬ」そして、犀星ひとりが永遠に住みぬ、なのだ。
寂しい人の詩の典型。
谷山浩子『河のほとりに』が似ている。
たぶん意識して作詞したのだろう。
いや偶然かも。