漫画『ガラスの仮面』はまだ続いている。
作者の美内すずえは天才である。
宗教の教祖になったりしていたが、やはり漫画家としては誰からも認められる存在だ。
「紫のバラの人」が速水社長と分かっても、相思相愛の仲でも、キス以上にはすすませず、まだ延々と続ける才能に感心する。
一度、安達祐実主演でドラマ化したことがあった。
あれは、ミスキャストだった。
容貌からして、いかにもいじめる側の役者でしょう。
野際陽子の月影先生も、そのまま映像化しすぎて、リアリティに欠けた。
最近、舞台でやっていたらしい。
主演は貫地谷しほり。なるほど、これは作者も納得であろう。
美人過ぎないし、一見平凡そうでかつ演技力がある。
月影先生は元宝塚の一路真輝。舞台であれば、原作の大袈裟な演技も違和感がない。
観に行きたかったのだが、もう終わっていた。残念。
北島マヤが!月影先生が目の前に! 舞台「ガラスの仮面」東京公演が開幕
ところでまるっきり話は変わる。
三島由紀夫作品は映像化しにくい小説が多い。
映画『炎上』は『金閣寺』を原作に制作された。
かなり期待して観たのがまずかったようで、ガッカリ度も大きかった。
映画の内容では、単なる障碍者イジメである。
そして、イジメられた吃音の障碍者がブチ切れて、金閣寺に放火した事件としか受けとめられない。
作者が原作に込めた、怪しい異常さが全く出ていない。
あの美しい文書からにじみ出る不穏な雰囲気、不気味さと異常さを表現しなければ意味がない。
ストーリーだけなぞっても『金閣寺』にはならない。
主人公の吃音の学生僧は信念を持って金閣寺を焼いた、サイコパスなのだ。
破壊への衝動、破滅への渇望、自分だけの美的な世界を作り出すための作業。
映画『炎上』にブツブツ文句を言っているときりがないのでこの辺で。
単なる個人的意見です。
しかし、映画『Mishima: A Life In Four Chapters』ポール・シュレイダー監督作品には共感できた。
製作関係者が有名監督ばかり、役者も豪華である。
[製作総指揮]フランシス・F・コッポラ、ジョージ・ルーカス
この段階で驚きだ。
[監督]ポール・シュレイダー
[脚本]ポール・シュレイダー、レナード・シュレイダー
[撮影監督]ジョン・ベイリー
[キャスト]緒形拳、沢田研二、永島敏行、坂東八十助、佐藤浩市、三上博史、 倉田保昭、平田満、勝野洋、根上淳、池部良、横尾忠則、
やはり、映画の形を取りながら、半舞台形式で描いているからだろう。小説の不穏な雰囲気がより出ている。
舞台に向いている作品なのかも。
坂東八十助演ずる吃音の青年僧。佐藤浩市演ずる足が不自由でシニカルな青年。
燃え盛る金閣寺の中で、松明を持って、笑顔で、踊るように歩く坂東八十助の姿。
アメリカ人のほうが原作を理解している。