以前、ロシアの仮想通貨、仮想ルーブルについて書きました。
欧米から経済制裁を受けているロシアが、制裁回避のために仮想ルーブルを開発中との内容です。
ロシア仮想ルーブルはプーチンさん次第
プーチンさんが大統領でいる間に、仮想ルーブルを作り上げるつもりです。
どんなに電子化が進んでも、権威のある人や組織が背後にいなければ通貨としての価値がありません。
https://mainichi.jp/articles/20180206/ddm/004/070/026000c
一点張り・論説室から
仮想通貨に潜む破壊的な力=福本容子
毎日新聞2018年2月6日 東京朝刊
昨年6月、ロシアのプーチン大統領が23歳の青年と短時間、言葉を交わした。彼の名はビタリック・ブテリン。ビットコインに次ぐ規模の仮想通貨、イーサリアムを開発した人物だ。
その後、プーチン大統領は、ロシアが発行する仮想通貨の研究を政府に指示する。「経済制裁をかわすことができる仮想通貨は、我々にとって好都合だ」。大統領の経済顧問はそう述べ、「仮想ルーブル」の発行に意欲をみせた。フィナンシャル・タイムズ紙が伝えている。
ただし、事は単純ではない。権限を自らに集中させる独裁的発想と、取引の記録を多数のコンピューターで分散管理し、互いの正当性を保証し合う仮想通貨は、なかなか相いれない。
プーチン大統領は最近、仮想通貨の安全性に疑問を投げかけ慎重さも見せているが、集中と分散の損得を測りかねているのかもしれない。
星新一『とんでもないやつ』あらすじ
ショートショートの傑作に、星新一の『とんでもないやつ』があります。
原始時代にグウと呼ばれる男がいた。
怠け者で働くのが大嫌いだった。
なんとか働かずに食べられないかと思案し、あることを思いつく。
海岸で集めた貝殻を、食べ物と交換できるようになったと強弁しようと。
そこへ、隣村から食糧をもった男が来る。
グウはその男に提案する。この貝殻と食糧を交換しようと。
しかし、当然のことながら男は納得しない。何か魔力があるのか、これを持っていれば獲物がよく取れるのかなどと質問されるが、グウは「そんなものはない。ただこれを交換することが流行っている」と答える。
男は躊躇する。
けれども、グウが大切そうに貝殻をしまうのをみて交換を決意してしまう。
うまく騙せたと喜ぶグウ。
もし怒ってやってきても、タダ働きでもすればいいと気軽に。
ところがいつまでたっても隣村の男はやってこない。
グウは大変なことを人間社会に及ぼしたのだ。
お金の発明である。
通貨の起源は?
これを読んだときには「お金の起源はこんな風に始まったのかも」などと勘違いしたものでした。星新一の描き方が、まるでその場を見てきたように面白かったためです。
そんな訳はありません。
古代の社会で権威ある人(村の長、王、貴族など)が、「これからはこの貝殻を物と交換できる」と指示を出したのが通貨の始まりです。
権威ある人の勢力が大きくなれば、その通貨も広い範囲に通用するようになる。
しかし、勢力が衰えればただの貝殻になる。
ビットコインの乱高下を見れば、権威のない通貨の価値がわかります。
今の仮想通貨は貝殻と同じレベルです。