『ロボコップ』(1987年)は衝撃的な作品だった
29年も前の映画だ。しかし、その後の続編や2014年のリメイクは、この作品のおどろおどろしさを超えていない。
ミシガン州デトロイト市が舞台。五大湖の南です。
オランダ人、ポール・ボーハーベンが監督している。エグい描写で有名な監督である。
未来のデトロイト市は犯罪都市になっており、警察も民営化されている。
運営しているのはオムニ社と呼ばれる大企業である。
この企業は、警察組合から待遇の改善を訴えられており、文句を言わないロボット警官を作る研究を進めていた。しかし、研究は頓挫していた。
アレックス・マーフィー巡査は熱血漢であり、犯罪者を憎む警官であった。
しかし、熱血過ぎるため、犯罪集団のクラレンス一味から残酷に殺害される。
エグすぎる殺し方。
実は、リーダーのクラレンスは、オムニ社の専務がバックにいる犯罪者であった。
その御蔭で逮捕されることはない。クラレンス役の俳優さんの悪党ぶりが素晴らしい。
オムニ社は、マーフィーの身体を“ロボコップ”として改造する。
ロボコップは犯罪者を次々に逮捕し、活躍するのだが、人間だった時の記憶がよみがえり、苦悩することになる。
単なる警官VS犯罪者の映画ではなく、マーフィーの苦悩がリアルに哀しく、胸が詰まった。
内容はよく知られているストーリーなのだが、民営の警察であるとか、えげつない殺し方をする犯罪者の描写などが、当時は驚きだった。
まさかこんな世界が、現実になるとは予想することもできなかった。
デトロイト市の過去と今
デトロイト市は、1960年代から80年代にかけて、フォードやGM(ゼネラルモーターズ)、クライスラーと言った有名自動車企業が世界の自動車産業を制しており、絶頂期だったのだ。
『ロボコップ』が上映された1987年は、デトロイト市が斜陽に向かい始めた頃だ。
その後、2013年7月に財政破綻する。会社で言えば倒産である。
180億ドル(約2兆円)もの負債を抱えていた。
そして現在、アメリカで、治安が最悪な犯罪都市である。
警察に連絡しても到着まで58分かかる。
“58分”!って、緊急通報の意味がない。犯罪者はやりたい放題である。
2013年の統計では、総犯罪件数が全米平均の約2.5倍であり、
殺人は9倍、レイプは約3.5倍、強盗は約6.3倍、傷害は約5.5倍、侵入盗は約2.8倍、泥棒は約1.3倍、車両盗難は約7.7倍といった有様だ。
アメリカでも、頭一つ抜けた無法地帯なのだ。
下の写真は、デトロイト市の荒廃した様子
そう、『ロボコップ』の世界が、現実になってしまったのだ。
クラレンスのような連中がゴロゴロいる。
いや、映画では民営とはいえ、ロボコップがいるので映画のデトロイト市の方が、まだましである。
ただし、2014年11月に、市の再建案が認められて、70億ドル(約7千億円)の債務が免除された。再建に向かい始めたのだ。
今回の大統領選挙の背後には、デトロイト市のような破綻した街に住む、アメリカ人の思いがあったのは間違いない。アメリカの自動車産業を追い詰めたのは日本車が大きく影響しているのだから。