今日の中国80 ファーウェイは、自称「純粋な民間企業」 

新しい年になりました。

今年も中国をめぐって様々な騒動が起こりそうです。

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昨年から中国企業のファーウェイが、米国や日本などから締め出されたことで相当なダメージを受けています。

その証拠に、一面2千万円以上もかかる新聞広告を、日経新聞など各社に出しているのです。

 

もちろん、ネット上にも「ファーウェイ・ジャパンより日本の皆様へ」と題した広告が上がっています。

要点だけ書き出すとこんな感じ。

  • 純粋な民間企業なので、いかなる政府や機関からも技術へのアクセスを要求されたことはない。
  • バッグドアがあるとの噂は事実無根。ハードは大丈夫。
  • それゆえに、ファーウェイ製品は安全。

(ファーウェイ・ジャパンより日本の皆様へ - Huawei Japan)

華為技術(ファーウェイ)は世界市場をリードするICTソリューションプロバイダーとして、サイバーセキュリティの重要性を十分に認識し、各国政府やお客様のセキュリティに関する懸念を理解しております。

 

ファーウェイは事業を展開するすべての国や地域の法規制や国際電気通信規格を遵守しています。そして、技術開発から事業運営まですべての領域においてセキュリティとプライバシー保護を万全にするための取り組みに、会社の重要方針として注力してきました。

 

ファーウェイにとってサイバーセキュリティとプライバシー保護への取り組みは最重要事項であり、自社の商業的利益をこれに優先させることは決してありません。私たちは純粋な民間企業であり、これまでにいかなる政府や機関からも当社の技術へのアクセスを要求されたことはありません。

 

一部の報道において、「製品を分解したところ、ハードウェアに余計なものが見つかった」「マルウェアが見つかった」「仕様書にないポートが見つかった」といった記述や、それらがバックドアに利用される可能性についての言及がありましたが、これはまったくの事実無根です。日本に導入されているファーウェイの製品はファーウェイならびに日本のお客様の厳格な導入試験に合格しております。

 

ファーウェイ・ジャパンは2005年に設立して以来、日本のオープンかつ公平な投資環境を背景に、日本のお客様、パートナーの皆様とともに日本経済ならびにデジタル分野における発展に貢献してまいりました。日本法人では約1,000名の従業員を雇用しており、そのうちの75%が現地採用となっているほか、2011年には日本経済団体連合会(経団連)にも加盟するなど、この地に深く根ざした事業運営を行っています。

 

東日本大震災の際には、母国で一度も地震を経験したことのない中国人社員も多くいました。未曾有の災害に慄きながらも、大切な人の無事を確かめたいと願う方たちのために、私たちはいち早く被災地へ駆けつけ、通信ネットワークの復旧に尽力しました。

 

ファーウェイはまた、数多くの日本企業の皆様と協業してきました。私たちにとって、こうした協業はイノベーションの源泉です。志をともにする仲間たちがいてこそ、より早く、より多くのイノベーションを生み出すことができるからです。私たちは日本のパートナー企業の皆様のものづくりへの誇り、品質に妥協しない匠の精神に共感し、未来の情報通信技術の発展のためにともに切磋琢磨しています。その結果、2017年には日本企業から約4,900億円相当の部品を調達しました。2018年にはその額は6,700億円と、日本の対中国輸出額の4%に相当する金額となる見込みです。

 

日本政府はモバイルサービスの料金を消費者にとって利用しやすい適正なものとすることを求めています。そうした目標を達成するためには、公正な競争環境のもと、多くのベンダーや通信事業者が優れた技術の活用を推進していくことが必要です。

 

私たちは今後も安全性・安定性の高いネットワークの実現を企業使命とし、日本の通信事業者やパートナーの皆様とともに情報通信技術について研鑽を重ね、日本社会に貢献できるよう努めてまいります。

 

華為技術日本株式会社
代表取締役社長
王剣峰(ジェフ・ワン)

 よけいに心配になりました。

「私たちは純粋な民間企業であり」と主張されているようですが、中国は共産党一党独裁の社会主義国であるはずです。

そのため実態としての純粋な民間企業など存在しません。政府からまったく干渉されない民間企業が存在できる国ではないのです。あるのなら教えてほしい。

巨大企業のgoogleですら、中国政府から検閲されるのを理由に進出をためらっている状態なのです。

 

しかも、「これまでにいかなる政府や機関からも当社の技術へのアクセスを要求されたことは」ないとは、「これからは」あるとの意味でしょうか。

多分あるのでしょう。

中国の国家情報法の恐ろしさ

昨年2017年6月28日に施行された「国家情報法」では、

(第7条)「いかなる組織及び個人も、法に基づき国の情報活動に協力し、国の情報活動に関する秘密を守る義務を有し」ています。

つまり、中国人であれば中国共産党への情報提供が義務なのです。

 

しかも、第9条には「国は、国の情報活動に大きな貢献のあった個人及び組織に対し、表彰及び報奨を行う」

などと国家ぐるみで密告や外国の情報収集を督励しています。

 

中国企業を信用してくださいと主張されても、「共産党への情報提供はしません」と明言しない限りまったく信頼できないのです。

(【中国】国家情報法の制定http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10404463_po_02720209.pdf?contentNo=1)

【中国】国家情報法の制定

主任調査員 海外立法情報調査室 岡村 志嘉子

*2017 年 6 月 27 日、国の情報活動の基本方針、実施体制、情報機関の職権、法的責任等について定める国家情報法が制定され、同年 6 月 28 日から施行された。

 

1 背景と経緯

習近平政権は、2014 年 4 月に総合的国家安全観(注 1)という国家安全保障に関する新たな基本方針を打ち出し、その方針の下に国家安全法制の体系的な整備を進めている。最近の関連立法としては、反スパイ法(2014 年)、国家安全法(2015 年)、反テロリズム法(2015年)、国外 NGO 国内活動管理法(2016 年)、サイバーセキュリティ法(2016 年)などが挙げられる。

このような国家安全関連の法整備の一環として、国の情報活動及び情報機関について定める国家情報法案が、2016 年 12 月、第 12 期全国人民代表大会常務委員会第 25 回会議に提出され、第 1 回審議が行われた。法案は、その後の意見公募と修正を経て、2017 年 6 月の同第 28 回会議における第 2 回審議の後、6 月 27 日に可決、成立した。法案は当初、全28 か条であったが、成立した国家情報法(注 2)は全 32 か条となっている。施行日は 2017年 6 月 28 日である。

 

2 構成と主な内容

(1) 構成

第 1 章:総則(第 1 条~第 9 条)、第 2 章:国家情報機関の職権(第 10 条~第 19 条)、第 3 章:国の情報活動の保障(第 20 条~第 27 条)、第 4 章:法的責任(第 28 条~第 31条)、第 5 章:附則(第 32 条)。

(2) 立法目的と基本方針

国の情報活動を強化及び保障し、国の安全と利益を守ることを目的とする(第 1 条)。

国の情報活動においては、総合的国家安全観を堅持し、国の重要政策決定に参考となる情報の提供を行い、国の安全に危害を及ぼすリスクの予防・解消のために情報面での支援を行い、国の政権、主権、統一・領土保全、国民福祉、経済社会の持続可能な発展その他国の重大な利益を守る(第 2 条)。

(3) 情報活動の実施体制

国は、統一的に役割分担され、科学的かつ効率的な国家情報体制を整備する(第 3 条)。

国の情報活動においては、公開活動と秘密活動、専門要員による活動と大衆による活動、責任分担と相互協力をそれぞれ組み合わせて実施する原則を堅持する(第 4 条)。

国家情報機関(国家安全機関、公安情報機関、軍情報機関の 3 種)は、職責に基づき役割分担と相互協力を行い、また、関係国家機関も、それぞれの職責と役割分担に基づき国家情報機関と密接に連携することが義務付けられる(第 5 条)。

 

立法情報

外国の立法 (2017.8) 国立国会図書館調査及び立法考査局

(4) 国家情報機関及びその職員の職権

国家情報機関は、法に基づき必要な方法、手段及び経路を用い、国内外で情報活動を行う(第 10 条)。

国家情報機関は、国外の機関・組織・個人が実施し、若しくは他人に実施させた、又は国内外の機関・組織・個人が結託して実施した、国の安全と利益に危害を及ぼす行為に関する情報を法に基づいて収集及び処理し、それらの行為の警戒、抑止、取締りのために根拠又は参考となる情報の提供を行わなければならない(第 11 条)。

国家情報機関は、法に基づき情報活動を行うに当たり、関係する機関・組織・個人に対し必要な支援・協力を求めることができる(第 14 条)。また、必要に応じて、国の関係規定に基づき、厳格な承認手続を経て、技術偵察措置(通信傍受等)及び職員の身分保護措置を講じることができる(第 15 条)。

国家情報機関の職員は、必要に応じて、国の関係規定に基づき、関係する機関・組織・個人の交通手段、通信手段、土地及び建物に対し、優先的な使用又は法に基づく差押えを行うことができる(第 17 条)。

(5) 国民の協力義務と権利保障

いかなる組織及び個人も、法に基づき国の情報活動に協力し、国の情報活動に関する秘密を守る義務を有し、国は、情報活動に協力した組織及び個人を保護する(第 7 条)

国の情報活動は、法に基づいて行い、人権を尊重及び保障し、個人及び組織の合法的権利利益を守らなければならない(第 8 条)。国は、国の情報活動に大きな貢献のあった個人及び組織に対し、表彰及び報奨を行う(第 9 条)。

国の情報活動への支援・協力により財産の損失が生じた個人及び組織に対しては、国の関係規定に基づき補償を行う(第 25 条)。

国家情報機関の職員がその任務遂行において、又は国家情報機関の協力者がその協力活動において、本人又はその近親者の身の安全が脅かされたときは、国の関係部門が保護・救済のために必要な措置を講ずる(第 23 条)。

(6) 情報活動における職務規律

国家情報機関及びその職員においては、職権の逸脱・濫用、個人・組織の合法的権利利益の侵害、職務上の便宜の私的利用、国家機密・企業秘密・個人情報の漏えいがあってはならない(第 19 条)。

いかなる個人及び組織も、職権の逸脱・濫用その他違法行為又は規律違反のあった国家情報機関及びその職員を告発及び告訴する権利を有し、告発・告訴を行った個人・組織に対して制止や報復を行うことがあってはならない(第 27 条)。

注(インターネット情報は 2017 年 7 月 13 日現在である。)