映画『ホワイトタイガー』ロシアは今も臨戦態勢

 


映画『ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火』予告編

あらすじ

第二次世界大戦、独ソ戦の末期ソビエト(現ロシア)陸軍。

ある戦車兵が、全身の90%に火傷を負いながら野戦病院にて回復する。

すべての記憶を失っており、白く塗られたタイガー戦車(ホワイトタイガー)にやられたことしか覚えていなかった。自らの名前もわからないので、仕方なくイワン・ナイヂョノフ(発見されし者)と名付けられる

この世のものではない雰囲気をただよわせたイワンは、ホワイトタイガーを倒すことのみにしか関心がない。

上官は戸惑いながらも強化したT-34戦車を用意してやる。

イワンは「戦車の神と話ができる」と言う。

つまり自分は、戦車の神がこの世に遣わした使者なのだと・・・・・・。

幽鬼の如きホワイトタイガーとイワン操るT-34との対決が始まる。

ロシアは、すでに次の戦争に備えている 

これは反戦映画ではありません。

ましてやファンタジー映画でもない。

露骨な戦意高揚映画と表現したほうがいいでしょう。

 

ロシア国民の臨戦態勢をイワン・ナイヂョノフがはっきりと語っています。

戦争は終わった。ホワイトタイガーはいなくなったのだと説得する上官に対して、

「あいつを焼き払うまで戦争は終わりません。

あいつは待っている。

20年でも、50年でも

100年でも待ち続け、また現れる。

焼き払わなければ。

おわかりのはずです」

このセリフの後、上官が振り返るとイワンは戦車ごと霧のように消えている。

「あいつ」とは明らかに祖国ロシアを害する者のことです。

ロシアの軍人は、ロシア人は、神とともに戦い続けるとのメッセージなのです。

 

タイガー戦車が本物ではないので(たぶんロシア戦車の改造版なので)、ちゃっちいなどとミリタリーオタクのような批判をしても仕方ありません。

(ロシア映画なので、T-34は本物が出場し放題です。ただし、ドイツ戦車については、タイガーのプラモデルを作っていた人間からするとイマイチ残念ですが)

「ヒトラーの悪魔への弁明」が現実を直視しすぎている

 イワンが消えた後も映画は続きます。

薄暗い怪しげな部屋でヒトラーが語っています。

正面には悪魔?らしき人物が座っている。

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「我々はあまりにもお互いをよく知りすぎた

隠し事はするまい

戦争は負けだ。

ヨーロッパは壊滅した

これから先どうなるのか

不幸なドイツは非難されるだろう

すべてはドイツ人のせいだと

数千冊の本が書かれ

数千のばかげた書類が発見され

数百の回想録が書かれるだろう

私とドイツは人類史上に類のない悪党、悪魔の化身と呼ばれる

ヨーロッパの夢を実現しようとしただけなのに

皆の考えを

体現してやった。

それは外科手術のようなものだ

初めは痛いが身体は健康になる

我々はヨーロッパの夢を実現し

だからこそ勝利したのではなかったか

皆が自分の妻にさえ言えないことを

勇敢で完全無欠の我々が明快に宣言したのだ

皆、ユダヤ人を嫌い

ロシアを恐れた

あの陰気で不機嫌な国はヨーロッパではない

野蛮な怪物だ

私はこの2つの問題を解決しようとした

それは我々独自の考えだったのか?いや違う

我々は問題を明るみ出しただけなのだ。

ヨーロッパ中が望んでいたことだ

地球が太陽の周りを廻り、寒さと暑さ、そして嵐と日の光がある限り

人々や民族の間の争いは続く

人は天国に住むと破滅する

人類は争いのおかげでありのままの姿になった。

戦争は自然でありきたりのものだ

戦争は常にどこかで起こる

戦争には始まりも終わりもない

戦争は生命そのものだ

戦争は原点なのだ・・・

ヒトラーは地獄で悪魔を相手に持論を訴え続けている。

ヨーロッパで、ユダヤ人は皆から嫌われていた。

ロシア人は陰気で不機嫌な国」「野蛮な怪物」だと罵倒しながら。

 

第二次世界大戦の結果、ヨーロパのユダヤ人人口は戦前の1/10になりました。

また、ドイツを中心としたヨーロッパ(EU)とロシアとの紛争も再開しています。

 

ロシア側からすれば、イワンの言う「あいつ」、ロシアの敵(EUや米国とその属国)はまだ残っているのです。

 

今のロシア、「陰気で不機嫌な国」を見てください。

ウクライナの東部とクリミア半島を軍事占領し、原子炉で推進するミサイルを開発して次の戦争にきっちりと備えています。

恐ろしいまでの野蛮性と現実主義が混在する軍事大国なのです。

国自体がまるでT-34戦車の化身のように。